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ゆっくりと端の関係者以外立ち入り禁止のドアが開き、つやのあるスマートなデザインのビジネスシューズが姿を現した。
チャコールグレーのイタリア製の2ボタンスーツ。ネイビーとワイン色ストライプのシルク製ネクタイ、ピンク系のドレスシャツは、袖口が丸くカーブを描き甘い雰囲気をかもし出している。
「白井部長よ!」
誰もが小声で囁き、声をかけられようと熱心に働いているそぶりを見せながら、店の外へ顔を出す。
笑顔で「いらっしゃいませ」と客に声をかけながら歩いてくる白井は、33歳で部長、しかも独身と言う事も手伝って、まさに婦人服売り場の憧れの的だった。
少しばかり美人ともてはやされる販売員の中には、当然、白井を恋人候補として見ている者もいて
わざわざ用も無いのに話しかけ、白井を立ち止まらせようと策を練る者もいた。
「白井部長、お疲れ様です。今日は、売れ行きが好調ですよ」
話しかけてみてから、立ち止まった白井の微笑んだ表情の裏に潜んだ怒りを横に立っているだけで、ふつふつといつもと違うピリピリした雰囲気を感じた販売員。
「……そうですか。雨なのにねー」
少しばかりトゲのある言い方に聴こえた。
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