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第六段階 プレゼントは必須
駅までの帰り道、尾田は
「なんだか、しっくりこない。なんかあるぞ」
腕組みしながら考え込んでいた。
「そうだよねー。白井部長は、どうして、買ってくれたんだろう」
貴子もコートの入った紙袋を見て首を傾げた。
「どう考えたって、下心以外の何者でもないだろ。お前、気をつけろよな。いいか、白井部長と二度と二人では会うなよ。俺に必ず言え」
心配性の尾田は、白井の事をあくまでも信用していないようだった。
改札を通ったところで、尾田が貴子の方を叩く。
「朝も奴には、会わないように気をつけろよ。セクハラされるかも知らないからな。コートの代金分触らせろとか」
「まさか!」
尾田の発言に貴子は、驚いて声を上げた。それと同時になんとなく顔が赤らんでしまうのを感じた。
―――そんな事を白井部長がしてくるわけが無いのに。尾田ときたら本当に礼儀知らずなんだから。
仕事に悪影響だわ。
尾田と別れてから電車の中で繰り返し考えてみた。
白井部長と出会ってから、商談の時、そして、今日。
考えてみても、白井がコートを自分にくれる理由が見当たらなかった。
家に帰ってきて、姿見で全身を映してみる。
―――欲しかった程じゃないのに。どうして、コート代を出してくれたんだろ?
オフホワイトのアンゴラコート。
「藤谷さんに似合いの色」そう言った白井の顔が思い出された。
相変わらず、整った顔で微笑んだ表情。
―――あんなにイケメンなんだから、彼女くらいいても当然よね。
コートを着せてくれて、ボタンをはめてくれた時の微かに服越しに感じた白井部長の手の感覚。
思い出すと、顔から火が出そうだった。
―――恥ずかしい。仕事柄なのか。女慣れしているのか。ボタンをはめるのも上手かったな。
なんとなく、白井部長の私生活まで想像しそうになって貴子は、右手で自分の頭をコツコツと叩いてみた。
―――あー、馬鹿なんだから。妄想ばっかり。それにしても、白井部長には改めて御礼も言いたいし
商談も続けて行いたい。なんとしても、明日はアポイントを取らないと。
貴子は、コートを脱ぐとハンガーにかけて、木製のウォールフックに吊り下げた。
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