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第八段階 大胆に気持ちは表現する
駅までの道のり。
いつもは寒いだけのこの道が、今日はやけに暖かく感じる。たぶん、気のせいだろうが、見慣れた景色がなんだか
クリスマス気分のせいか凄くライトアップされていて綺麗だと感じる。
白井は、弾むような足取りで進んでいた。
―――好きな女が出来るって、こんなにたのしいもんだっけかな? しかし、今日は、俺の気持ちが伝えられて良かった。彼氏がいるのも仕方がない。それぐらいの方が反対に燃える。
スマホを取り出して、電話をかける。
4回目の呼び出し音のあと、聞きたかった声が聞こえてきた。
「もしもし、お疲れ様です。何かありましたか?」
「おいおい、他人行儀だな」
「他人ですから」
貴子の声は、感情がなく冷たかった。
「声」
「え?」
「声聞きたかったんだ。一日の終わりに」
「……」
「あれ、聞こえなかった?」
「聞こえてますけど、返答に困る事を言わないで下さい」
目の前に大きなツリーが見えていた。電飾がチカチカと点滅している。
「綺麗なんだ。ツリーが。藤谷さんと見たかったな」
「……」
「また、無言」
「そういう事言われても困るんです」
「困ってる藤谷さんも可愛いんだろうなあ」
「……」
「また、黙ってる」
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