第十四段階 押してだめなら○○○みるという法則

2/15
前へ
/40ページ
次へ
―――なんて書く? どう言った所で結果は変わらない。 スマホをしまって、やっとホームに入ってきた電車のライトを静かに見つめた。 電車の椅子に座ると、熱すぎる熱風が足に吹きつけてきた。 ポケットに手を突っ込んだまま、静かに瞼を閉じた。 浮かんでくるのは、彼女の微笑んだ笑顔とエスカレーターで落ちてくる彼女の必死な表情だった。 そして、最後に浮かんできたのは、会議室での彼女の落胆の色を隠した作り笑いだった。 ―――彼女にあんな顔をさせた俺は、情け無い男過ぎるだろ。 ぎゅっと、瞼を閉じて全てを忘れたいような気分になった。 ―――面倒だ。だから、恋愛なんてしたくなかったんだ。 気持ちが晴れなくても、自然と朝陽は昇った。 白井は、鏡の前でネクタイを締めた。 ―――今日から、イヴまで、あと一週間。クリスマス商戦の本番だ。気合入れないとな。 マンション内で会った人に挨拶をして駅までの道を早足で歩く。 駅まで5分。走れば3分はかからない。急ぐ必要もないのだが、どうにも気が焦っていた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加