第十四段階 押してだめなら○○○みるという法則

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白井は、胸をはれる大人になりたいって今更ながらに思っていた。だから、子供がいようがいまいが今は、遮断機をくぐらない。そう決めた。決めた事は、必ずやり通したい。 ―――決めた事……そうだ。俺は、彼女を諦めないって、決めたばかりだった。 白井は、顔を上げて正面を見ていた。 遮断機が上がり、白井の表情もしだいに晴れやかになっていった。 「今日の白井部長、張り切ってますね」 「ほんと。いつにもまして、ワイシャツの袖口をまくった姿が絵になってるよね」 女性社員たちや婦人服のフロアの各店舗の販売員達は、皆うっとりと白井を眺めた。 デパートのオープン時間前に、フロアの飾り付けを脚立に乗って直している白井。 「もう少し、右に上げて!……はい。OK」 脚立から降りて、白井は腕時計を眺めた。 「そろそろ、オープンだ。自分の持ち場にもどって」 「「「はい」」」 脚立を肩に担いで早足で、関係者以外立ち入り禁止のドアへと向かう白井。 事務所に戻ると、急いで脚立を置いて袖口を直して、ジャケットを羽織った。ボタンを閉めて再びフロアへ出て行く。 エスカレーターの近くへ立ち、他の何人かの社員と並んでお客様を迎える体制に入った。 「いらっしゃいませ」 デパートがオープンした。 お辞儀をして、客を迎える白井と他の社員達。 笑顔でエスカレーターを上ってくる客の姿に、白井もとっておきの笑顔を見せる。     
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