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白井は、胸をはれる大人になりたいって今更ながらに思っていた。だから、子供がいようがいまいが今は、遮断機をくぐらない。そう決めた。決めた事は、必ずやり通したい。
―――決めた事……そうだ。俺は、彼女を諦めないって、決めたばかりだった。
白井は、顔を上げて正面を見ていた。
遮断機が上がり、白井の表情もしだいに晴れやかになっていった。
「今日の白井部長、張り切ってますね」
「ほんと。いつにもまして、ワイシャツの袖口をまくった姿が絵になってるよね」
女性社員たちや婦人服のフロアの各店舗の販売員達は、皆うっとりと白井を眺めた。
デパートのオープン時間前に、フロアの飾り付けを脚立に乗って直している白井。
「もう少し、右に上げて!……はい。OK」
脚立から降りて、白井は腕時計を眺めた。
「そろそろ、オープンだ。自分の持ち場にもどって」
「「「はい」」」
脚立を肩に担いで早足で、関係者以外立ち入り禁止のドアへと向かう白井。
事務所に戻ると、急いで脚立を置いて袖口を直して、ジャケットを羽織った。ボタンを閉めて再びフロアへ出て行く。
エスカレーターの近くへ立ち、他の何人かの社員と並んでお客様を迎える体制に入った。
「いらっしゃいませ」
デパートがオープンした。
お辞儀をして、客を迎える白井と他の社員達。
笑顔でエスカレーターを上ってくる客の姿に、白井もとっておきの笑顔を見せる。
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