第十七段階 思いやるのが本物の恋

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「今から、行く。住所言えよ」 驚いたように尾田の顔を立ち上がって見ている涼子。 「ああ、……わかった。すぐ行く。動くなよ」 電話を切ってから涼子を直視した。 「今、ちょっと行く所が出来たんだ。悪いけど今日はこれで……」 「仕事?」 「いや、仕事じゃない」 嘘がつけない尾田は、まっすぐに涼子を見た。涼子は、少し震えるような唇から小さく声を発した。 「まさかと思うんだけど、聞いてもいい?」 「ああ」 「他の女のところへ行くの?」 尾田の嘘がつけない性分は、時に人を傷つけてしまう。それを尾田も頭ではわかっている。わかっているのに、嘘は言えなかった。 「ああ」 「どうしてなの?」 とがめる様な口調の涼子に近づく尾田。 「放っておけないんだ。あいつだけは」 その言葉に目を大きく見開く涼子。 「仕事でもない女の所へ行く理由が、それ?」 「ああ」 「正直すぎるのも考え物ね。……早く行きなさいよ」くるっと後ろを向く涼子。 キッチンからは、尾田が好きだと言っていたカレーの匂いがしていた。 「行ってよ!」 大きな声で叫ぶように言う涼子の背中が少しだけ揺れていた。     
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