26人が本棚に入れています
本棚に追加
「キスに歳とか関係ねえだろ。しっかし、頭にくる。俺が一発殴ってやる。なんでひっぱたかなかったんだよ」
「ひっぱたくのも嫌だったの。キスぐらいで動揺する私を見せたくなかった。怒る価値も無いって判断したから」
「はあ、全く! 嫌になる。」
ビールを一気飲みする尾田。
静かにながれるピアノ音楽を二人して聴いていた。
「でもね、服がさあ」
「服? すいません。もう一杯ください」
オーダーしてから尾田はネクタイを緩めた。
「うん。車の中に置いてきちゃったの」
「はあ? 白井部長のかよ」
頷く貴子。
「任せろ。俺が今から、取って来てやるから、それでいいか?」
「うん。ごめんね。尾田。でも、明日でいいからさ、今日は一緒にいてよ」
貴子の言葉に尾田は、ひとつため息をついた。
「一緒にいてとか、気軽に男にいうんじゃねえぞ」
「うん、わかってる。尾田だからいうんだもん」
尾田は首を横に振った。
「全く、俺は男じゃねえのかよ」
「うん。相方だもん。特別な存在だから」
笑顔を見せられて、尾田は、ますます頭を抱えた。
―――こいつの笑顔に俺はめちゃくちゃ弱い。こいつの笑顔の為だったら俺は我慢できる。自分の事よりこいつの事を考えたい。いつも笑顔でいて欲しいから。
最初のコメントを投稿しよう!