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第十九段階 恋の魔法
「藤谷さん、最近ますます綺麗ですね」後輩の女性社員に朝から言われた貴子。
「え? 本当に。お世辞上手くなったねえ、希恵ちゃん」
朝の休憩所。自販機でホット珈琲を買った貴子は、ジョボジョボとカップに珈琲が注がれていくのを待っていた。
「本当ですよ。元が良いからいつも綺麗ですけど。最近特に輝いてるなーって思ってたんですよ」
貴子がカップを取ると、希恵が今度はココアのボタンを押した。
「輝いてる? マジで」
右手でほっぺたをおさえる貴子。
「大マジです。彼氏でも出来たんですか?」
「あ、うん。まあ、そうかなーって位かな?」
「うわあ、やっぱり! そうじゃないかなって思ってたんですよね。相手は、尾田さんですか?」
貴子は、珈琲を吹きそうになった。
―――みんなして、私の相手は尾田だと思ってんだから!
「違うんですか?」
「全然違うよ。尾田とは、ただの仕事仲間だから」
「へえ、そうなんですね。お似合いだなあって思ってたのにな」
「お似合いって、尾田と? やめてよね」
そんなやり取りをしている所へ、話題の人物が現れた。
「うっす!」
朝から人一倍に元気な尾田だった。
「おはようございます。今、尾田さんの話をしてたんですよ」
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