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第二十段階 上司に対する誤解
「遅くなって悪かったな。準備は進んでるか?」
デパートに戻ってから、部下に明日、クリスマスイヴに行うセールの準備の最終チェックの進み具合を聞く白井。
「はい、問題ないです。あの……部長、お体の具合でも?」
「いや、何故?」
白井は部下へ顔を向けた。
「あ、顔色がいつもより良くない感じがしたもので」
「顔色? そんなにか?」
「ええ、体調が悪いようでしたら、少し休まれては? 最近、忙しいですし」
部下に心配されて白井は、ふっと考え込むように顎をさすった。
「……じゃあ、少しだけ頼んでいいか?」
部下に任せて白井は従業員用のトイレへ向かった。
―――そんなに顔色が悪いのか? 言われるほどなのか?
トイレに入って鏡に向かった白井は、洗面台に思わず手をついた。
「ひでー有様だ」
―――客商売なのにこんな顔じゃ外へ出られない。なんとかしないと。
白井は、ばしゃばしゃと飛沫を上げて顔を洗った。何べんも何べんも洗った。びしょびしょの顔を上げて鏡に向かった。
―――洗っても洗っても落とせないものがある。そんな事さえ気がつかないほどに馬鹿だったとはな。自分で自分が嫌になってくる。
顔をハンカチで拭いて、白井は事務所へと向かった。
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