第十八段階 ゲーム感覚なのが本物の恋

1/4
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ

第十八段階 ゲーム感覚なのが本物の恋

23日、21:00ジャスト。 ゆったりとした足取りでマンションのエレベーターへ向かう澤口。 亜矢のワンルームマンションだ。5階建ての茶色いマンション。実家が金持ちでもなく、特に援助も無い女の一人暮らしとしたら平均的な暮らしぶりだろう。 約束なんかしていなかった。それでも、亜矢がこの日のこの時間にいる事は既に情報として手に入れていた。 亜矢の部屋の前に来た澤口。廊下に面したガラス窓からは明かりがないように見える。初めから、チャイムを押すつもりは無かった。 合鍵なら既に亜矢からもらっていたから、自分の家のように鍵を開ける。 ガチャ 鍵を開けて入ると、玄関に男物の先の尖がった革靴があった。 靴を脱いで廊下を歩く。なるべく急いで部屋の明かりを点けて「亜矢」と名前を呼ぶ。 ワンルームの欠点とも言うべき所。それは、部屋の全てを見渡せる所だ。 窓際のベッドの上にいる女と男。ハダカだった彼らは、布団で体を隠しながら俺を驚いた表情で見ている。 「亜矢? どうしてだ?」ベッドに近づかずに遠くから問いかける澤口。 「……ごめんなさい。でも」 澤口は、悲しげな瞳で亜矢を眺めた。 「あなたが悪いのよ。忙しいって私を放っておくから」     
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!