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眠気は一瞬で吹き飛んだ。俺は自分でも驚異的なスピードでベッドから脱出する。
「お前なあ!」
飼い主の気持ちなど察しない猫様は、呑気に甘えた鳴き声を出して足下にすり寄ってきた。
黒い死骸は仰向けになってい動かない。猫が仕留めた獲物を運んでくるというのは有名な話だが、まさかこんな形で当事者になるとは思わなかった。
飼い猫はさっさと朝飯を用意しろと言わんばかりに鳴き続けている。
「ああもう……つーかお前、俺の顔舐めたよな……」
もしかしなくても、こいつは『それ』を咥えて運んだに違いない。
背筋に鳥肌が立つのを感じ、俺は思わず舐められた頬を袖で拭った。
「くっそー、今年はまだ見なかったんだけどなぁ……あれを焚くかな……」
どこから入ったのか知らないが、一匹見ればどれだけいるか分かったものじゃない。今後も安心して暮らすためにも、一計を案じなければならないだろう。
まったくもって、最悪な気分での一日の始まりだった。
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