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黒い躍動
「ちくしょう! ここまでなのか!?」
絶体絶命だった。
暗闇の中、追っ手はぴたりとオレの背後をついてきていた。
その気になればいつでもトドメをさせるのに、必死で逃げ惑うオレを弄んでいる。
嗜虐的な視線を全身という全身に浴びせかけられ、もう助かる術などないと本能では悟っていた。
だけど、生きることを諦めきれない。
オレが蟻だとするなら、相手は巨象だ。それくらいの体格差がある。
自分よりもずっと大きな身体をもつ相手に対して、出来ることといえば小ささを活かして素早く物陰に隠れるくらいしかない。
しかし、『この場所』は追っ手の庭も同然。
あっさり見つかり無様に引きずり出されてしまうのがオチだった。
そしてまた、死と隣り合わせの追いかけっこが始まる。
――あそこはやめとけ。どれだけの仲間が帰ってこなかったと思ってるんだ。
死を間近にして、親友の言葉が頭を過ぎる。
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