先輩と後輩

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先輩と後輩

「小宮山さん、飲み物、くれないかな?」 「はい、天田先輩」 炎天下の中、私はクーラーボックスの中から、一つのスポーツドリンクを差し出した。サンキュ、と柔らかく笑む先輩に、タオルを渡して、ベンチで快適に休んでもらうことが何より嬉しい。 「先輩? 次の大会で引退だなんて、みんなも寂しいんじゃないですか?」 「あははっ、そんなことないんじゃないかな? ようやく俺達の時代が来た、って2年生は思ってるかも知れないよ」 「うふふっ。それも、そうかも。みんな、目立ちたがりだから」 私は、サッカー部のマネージャーをしている。元々、父の影響もあってサッカーが特に好きだった。しかし、私の運動神経の悪さは誰に似たのか見事なまでに最低で、ボールを蹴飛ばせば見当違いな方向に向かっていき、足は謎の負傷をする。そして、放課後の校庭で、足の痛みを抱えながら一人で絶望していた私に、声をかけてきた人物がいた。それが天田先輩との出会いで、私にサッカーとの新しい関わり方を教えてくれたのだ。
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