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episode234 ドリアン・グレイナイト①
「ねえユウタ――君の目は見る角度によっては菫色なんだね」
一夜明け。
朝が来て昼が過ぎても
画家は夢中でチョークを走らせていた。
「羨ましい。僕の瞳もそんな色なら文句ないのに」
「文句なんかないだろ?君の顔のどこに文句がある?」
「まあね」
「だったらお願い。動かないで」
足元には束になった
幾枚ものデッサン、デッサン、デッサン――。
「そりゃ無理だよ。僕は皿の上のリンゴやブドウとは違うもの」
言いながら
銀の皿に盛られたフルーツに手を伸ばすと。
「あ、食べちゃダメだよ」
「食べるさ。いいだろ?一つや二つ無くたって。でも安心しなよ、果物の方から僕を食べる事はないからさ」
僕は嫌味半分笑って
青いブドウを二、三口に放り込んだ。
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