第三章~悪魔のきもち~

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『いまの心海の中には、あの時に傷ついた気持ちといまお前のことが好きな気持ちとでぐちゃぐちゃになってる』 「……はい」 『なんで、傷つけたのにまた現れたんだよ』 先輩のすごく苦しそうな声。 心海のことを本当に思ってるからそんな声になるんだと思う。 でも、俺だって……。 「先輩にはわからないと思います」 俺だって、できることならあの頃から傷つけたくなんてなかった。 でも、あの時はあぁでもしないと心海から離れることなんて多分無理だった。 傷つけた俺には、心海といる資格はないと。 そう自分にいい聞かせて、東京に帰ったんだから。 『まぁ、俺は御曹司でもなんでもないから難しいことはわからない』 「……なんかすみません」 あぁは言ったけど、でもそんなこと言うつもりもなくて。 でも、どうしても心海のことになると……。 『いや。ただ、心海がどんなにお前を拒絶しよとお前はくるべきだと思う。あ、でも明日卒業式か』 「いや、いいんです。俺こっちの試験クリアしたんで今日帰ります。そのまま北海道行きますね」 『わかった。心海のこと救ってやってくれ』 「……はい」 心海を救えるのは俺であってほしい。 俺が心海を救いたい。 「はやく会いてぇ」 心海に。 会いたくて、会いたくて仕方がなかった。
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