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「ま、いっか」
なにも答えないあたしの顔をみて。
「俺はお前の飼い主だから……な?」
すごくすごく優しくあたし見ていた。
「……うん」
「お前の飼い主は、俺ってお前も分かってきたんだな」
「……こんだけ言われれば」
素直になれないこの口。
今じゃあ、ほかの人なんてありえないくせに。
「じゃあもうほかの男に尻尾なんて振るな」
「尻尾なんて……」
「振ってんじゃん。アイツに」
「音哉とは別に……」
なんて言うけど、悪魔と一緒にいれない寂しさに負けてしまいそうになることもあった。
このまま本当に音哉とって何度も思った。
でも、悪魔への思いがそれを留まらせた。
どうしても、やっぱり悪魔が好きだった。
いい、別にあたしを好きじゃなくたって。
「暁さんのこと、好きです」
素直になろう、今ぐらい。
「ん、じゃあ一緒に帰ろう」
あたしの手をぎゅっと握る。
「はい!」
いつかは、あたしのことを見てくれる。
飼い主とかそんな言葉じゃなくて、きちんと言葉をくれるその日まで。
彼を待ってみようと思う。
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