俺の光

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ムスッと返すと、貫一さんはやれやれと息を吐いた。 「……初めての負けがショックだったのはわかる。でもリングの上に立つ以上、負ける可能性はあるんだ。どんな強者も、その可能性をゼロにすることはできない。 ……だがな、リングに立てもしなければ、勝つ可能性はゼロなんだ。お前は今、自分で勝利の可能性を潰そうとしてるんだぞ」 「違います。俺は勝つために練習してるんです」 「練習に打ち込むことと自暴自棄は違う」 「自暴自棄になんかなってません」 「なってるだろ」 腕を掴まれた。 あったかい手。俺を見上げてくる心配げな瞳。 それらが今は、ひどく辛い。 「……放っておいてください」
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