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貫一さんは「ならせめて、ミドル級リミットから1ポンド上げた契約試合にしよう。そうすれば負けても日本タイトルは剥奪されない」と言ったが、それも聞かなかった。
お客さんは日本チャンピオンが戦う姿を観に来るのだ。ベルトを巻いてリングに立っておきながらそれを賭けないのは卑怯だと思った。
それに、ニールだって負ければOPBFランクを落としてしまうだろう。それを覚悟のうえで俺に挑んできたのだ。そんな彼に、誠心誠意で応えたい。
俺はボクサーとして生きると決めたのだ。
リスクなんか恐れない。
挑まれたなら己の全てを賭けて受ける。
不安そうな貫一さんに、何度目かの「ごめんなさい」を言うと、無言で耳を引っ張られた。
「いたた……安心してください。絶対勝ちますから」
「……当然だろ」
差しだされたマウスピースを咥えると、貫一さんはようやく諦め混じりに笑った。
「行ってこい」
カァァン!
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