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オファーしてきただけあってやる気十分のニールは、先手先手で攻めてくる。
彼のリズムは独特で、これまで体験したことの無いものだった。普通に打とうとしてもパンチが当たらない。異国の空気を感じる動きに、少々戸惑った。
だが俺は、これまでの戦いで順応力を身に着けていたらしい。すぐに見切って対応できるようになった。
ニールは、加地さんに比べればパワーに欠けるし、柳瀬さんより数段遅い。
通説として、「日本の中重量級ボクサーは海外のボクサーに劣る」と言われるが、俺はそうでもないと思う。
確かに全体で比較すれば、日本人ボクサーのほうが弱い。
農耕民族のDNAが作用し、人種的な身体能力差を生じさせているため、前提的なフィジカルの不利がある。
けれどそれを知識と努力で撥ね退けて世界に挑もうとする日本の第一線級ボクサーたちは、海外ボクサーとも十分に渡り合える力を持っていると思う。
俺がそう考えるのは、海外ボクサーと戦った経験が無いからかもしれない。
いまニールと戦っていてもその考えに変動が起きないのは、彼がアジア人で人種の差が無いからかもしれない。
そして、俺が今度挑戦するWBAチャンピオンはメキシコ人だ。
人種の差がどれほど影響するのか……そう考えて、内心で首を振る。
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