恋焦がれて

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もう、十分だ。 お金なんかいらない。ましてや新居だとか養われるとかそんなもの望んでない。 俺は、お前を支えられるなら、それでいい。 それだけで、いい、はずなのに……。 「亘祐、上手上手、さすがだな~」 「もう智典さん、真剣にやってくださいよ!」 「いや~、亘祐が上手すぎて俺じゃ相手にならないよ」 「会長ばっかり見てないでちゃんと集中してくださいっ!」 亘祐の抗議のパンチをひらりとかわして、智典が俺にウインクしてくる。 自分の耳が赤くなるのがわかった。 「もーっ! 絶対本気にさせてやるぅぅ!」 はははっ、と笑って軽やかにステップする。そのしなる筋肉の動きを目で追って、口元を押さえる。 3ヵ月半前、海辺の公園で智典とキスをした。
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