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そうして俺は、日々をやり過ごす。
自分の欲望を自分で処理して、智典の前では平静を装う。
気付くな、気づくな。
俺の想いに、気づくな。
「貫一さん、ミット打ちお願いします」
「おう」
ミットをはめて、リングの上で智典と向かい合う。ミットを構えたところに、スピーディーで切れのあるパンチが飛んでくる。
だがそのスピードもパワーも、俺に合わせてかなり抑えられている。
全力でやれと言いたいところだが、全力を出されるとどう頑張っても相手してやれないので、悔しいがそれに甘んじるしかない。
その代わり、俺ができることをする。
「ワンツー、左フック、右ストレート、左アッパー、」
ミットの位置を目まぐるしく変えて、基本のコンビネーションから世界戦に向けて練った応用までを、何種類も打たせる。
「そこでステップインして、右ボディアッパー、左フック、右ストレート、左フック、よし、そこでボディにアッパー!」
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