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世界チャンピオンになるなんて大言を吐いておきながら尻尾巻いて逃げるのだ。恥ずかしくて合わせる顔なんてない。
それに彼のそばにいるかぎり、俺は彼を諦められないだろう。叶わぬ想いを抱えながら生きていくのは辛い。離れるしかない。
彼との接点をなくし、彼のいない生活を送る。
吉田ジムに近いマンションから大学の寮に引っ越して、ひたすら勉強して就職活動して、どこかの会社で働く。
そしていずれ誰かと結婚して子供を作って……世間が言うところの『普通の幸せ』を手に入れる。
想像して、胸が潰れそうに痛んだ。
『普通の幸せ』……明るいはずのイメージが、徐々に暗くブラックアウトしていく。
貫一さん……
笑う顔も、怒った顔も、呆れた顔も、ぜんぶ大好きだった。あったかい声、触れた温もり……。
「貫一さん……っ、」
あなたのいない人生は、真っ暗だ。
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