俺の光

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言い返せない。口を尖らせて俯く俺に、加地さんはハハンと嘲るように笑って、 「だいたいお前どうせすぐ再戦できるやろ、Kフィットネスのぼんぼんっちゅう反則的なコネと金を持っとるんやからな。ホンマずっこいわ。ワイなんて柳瀬に何度再戦申し込んでも蹴られるからチャンピオンカーニバルで挑戦権得るしかないっちゅうのに」 確かに、父さんに頼めば、竜門さんに再戦の話をしてくれるだろう。 自分がいかに恵まれているかは重々承知している。 不遇な環境で、努力しても報われずに消えていく選手は大勢いるんだ。……貫一さんのように。 「……だからこそ、頑張らないといけないんです。他の選手より恵まれた環境にいるんだから、他の選手の何倍も努力しないと。そうして勝ち得たものでないと、俺自身の力は認めてもらえないから……」 加地さんは真顔になり、突き飛ばすように俺の胸倉を放した。 「わかってんならイジケてんちゃうわボケ」  「はい……」 そうだ、頑張らないといけない。 弱気になって自虐に浸っている場合じゃない。 俺は、やっぱり貫一さんがいないと生きていけない。こんなに人を好きになったのは初めてなんだ。夢を持ったのも初めてだったんだ。失くしたくない。どうしても。 頑張らないと……だけど、どうすれば柳瀬さんに勝てるのか……。 俯いて思案していると、加地さんがフン、と鼻を鳴らした。 「また辛気臭い顔しやがって。どうせ、どうやったら勝てるかわからん思てんのやろ?」 俺が無言で頷くと、加地さんは腕組みして話し始めた。
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