俺の光

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加地さんと話したことで感傷的な気分は失せた。そして自分と向き合う覚悟がついた。 マンションに帰り、パソコンのメールソフトを立ち上げて、父さんのメールを開く。 ――智くん、筋繊維はね、断裂するからこそ補修されて太くなるものなんだよ。……ゲットマッスル。 そんなメッセージに添付してある動画アイコンをクリックする。見覚えのある場所が映し出された。 これは、俺と柳瀬さんの試合動画だ。 試合観戦に来たKフィットネスのスタッフが録画して父さんへ送ったものを、父さんが俺に転送してくれた。おそらく挫折から学べという意図が込められているのだろう。 いままで辛くて観ることを避けていたが、もう逃げない。 これを観て、自分の敗因を分析し柳瀬さんへの対策を考えるんだ。 ゴングが鳴った。 リング上の光景に、胸が痛んだ。 まだ乾いていない傷をナイフでえぐられるような痛みだ。呻きたくなるのを噛み殺しながら、画面を注視する。 無様だった。
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