俺の光

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画面の端に表示されている4年前の日付を見て、それが貫一さんの最後の試合だとわかった。 この試合の結果は知っている。 以前、酔った貫一さんが語ったから……このときの悔しさも、聞いた。 彼が打ち負かされるところなんて見たくない。 負ける痛みを知った今は、なおさらだ。 だが、全身から闘志を放ってリングに立つ彼から目を逸らせない。 カァーーン! ゴングが高く鳴った。 貫一さんは軽快なステップワークで、相手のパンチを避けつつ前進する。 小刻みなジャブで攻撃のリズムを作り、右ストレートで顔、左でボディと、上下に打ち分けながらヒットを重ねていく。 正直、加地さんや柳瀬さんと戦ったあとでは、技自体はくすんで見える。だけど何度も練習を重ねたとわかる堅実な安定感があった。 それに画面越しでも伝わってくる彼の気迫は、俺が知る誰にも負けていない。
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