俺の光

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激しい打ち合いになった。 互いに汗を散らして、千切れんばかりに腕を振るう。熾烈な拳の応酬だ。 青年のパンチが貫一さんのレバーにヒットした。 貫一さんの顔が歪んだ。 俺も思わず同じ表情になる。 あの苦しさはよく知っている。 しかも既にスタミナ切れの状態でくらえば、まともに立ってはいられない。 貫一さんの体は機能を停止したがっている。 けれど彼はそれを根性で制して、ムリヤリ動かし続ける。 殴打を何発もくらいながら腕を振り続ける。 度重なる打撃を受けた胴は赤くなり、顔も無残に腫れてしまった。 それでも彼はダウンしない。 ほとんど動かせなくなった足をリングに根差し、相手の攻撃を上半身のムービングと腕のガードだけで防ぎながら、希望を繋ぐために拳を突き出す。 その不屈の姿に、胸の奥が燃えた。 けれど、彼が負ける瞬間が近づいてくる。 ラウンドゴングがなるたびに心臓の表面が凍り付いていく。それが胸奥の炎にあぶられて、目から結露が流れ出た。 勝ってくれ……!  彼はあんなに頑張ってる。 あんなにズタボロになりながらも戦ってる。
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