俺の光

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起き上がろうと突っ張っていた肘がガクン、と折れた。 胴体が再びリングに沈む。 それでも頭だけは地に着けない。 アゴを仰け反らせ、引き結んだ口端から逆流した胃酸をこぼしながら、なんとか体を持ち上げようとしている。 ……っ! もう……っ、 「……たて、立て! 立て! 立ってくれ……!」 『ファイブ、シックス、』 「カウントを止めろ! 貫一さんはまだ戦える! まだ戦ってるんだ!」  『セブン、エイト、ナイン、』 「待ってくれ! 頼むから、待って……!」 『テン』 非情な宣告が下った。 貫一さんは羽をもがれた鳥のように少しのたうって、動かなくなった。 べちゃりと潰れたようにキャンバスに腹ばいになった体から、心がボロボロとこぼれ出て、リングの上に散らばっていくように見えた。
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