俺の光

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セコンドに支えられながら上体を起こした彼は、呆然と天を仰いで涙を流した。 そこで映像は途切れた。 静止した画面は、俺の涙で濡れていた。 貫一さん……。 アルコールの臭気が鼻によみがえる。 自嘲のように語った彼の、昏く沈んでいた瞳に、今、言葉をかける。 もっと自分を誇っていい。 あなたは十分頑張った。頑張ったんだ……! ――俺にとっちゃ、お前がチャンピオンだ 彼の言葉が、頭の中にこだました。 あのとき、あなたはこんな想いでいたのか。 励ましたくても言葉は届かない、その無力感を抱えて、それでも懸命に俺を支えようとしてくれたのか。 なのに、俺は……。
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