171人が本棚に入れています
本棚に追加
セコンドに支えられながら上体を起こした彼は、呆然と天を仰いで涙を流した。
そこで映像は途切れた。
静止した画面は、俺の涙で濡れていた。
貫一さん……。
アルコールの臭気が鼻によみがえる。
自嘲のように語った彼の、昏く沈んでいた瞳に、今、言葉をかける。
もっと自分を誇っていい。
あなたは十分頑張った。頑張ったんだ……!
――俺にとっちゃ、お前がチャンピオンだ
彼の言葉が、頭の中にこだました。
あのとき、あなたはこんな想いでいたのか。
励ましたくても言葉は届かない、その無力感を抱えて、それでも懸命に俺を支えようとしてくれたのか。
なのに、俺は……。
最初のコメントを投稿しよう!