171人が本棚に入れています
本棚に追加
身体中が震えだす。
ぐっと拳を握る。
彼を抱えて世界に行くと告げた、自分の言葉の重さを、今更ながら痛感した。
俺は、自分の才能にうぬぼれていた。
だから世界を目指すだなんて大きなことも平気で言えた。
俺は、本当に子供だった。挫折知らずのお坊ちゃん。何も知らなかった。敗北の味も、貫一さんの苦しみも。
そんな幼稚な俺の夢語りは、彼を呆れされるものでしかなかっただろう。……相手にされなくて当然だ。
恥ずかしさで頬が熱くなる。
強い男でありたかった。
あなたが誇れる選手になりたかった。
だけど、いくら体を鍛えても、未熟な心は脆かった。
貫一さんは、負けてうなだれる俺の背を支えて、何度も繰り返し励ましてくれた。粉々になった俺の心を寄せ集めて、元に戻そうとするように。
あんなにみっともなく弱さを晒しても、彼は俺を見捨てず、心配してくれた。
それなのに、俺は……。
「……最低だ……」
ごめん、ごめん貫一さん。
最初のコメントを投稿しよう!