俺の光

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翌日、大学を終えてそのまま吉田ジムに向かった。ドアを開け、挨拶より先に頭を下げる。 「貫一さん、すみません、昨日は……」 「智典、リングに上がれ。スパーリングやるぞ」 謝罪を意外な言葉でさえぎられ、思わず頭を上げた。 「……マススパーですよね?」 「いいや、スパーリングだ。ほらとっとと準備しろ」 普段どおりの表情だが、有無を言わせぬオーラがあった。気圧されて、急かされるままウェアに着替えて練習用のグローブを着け、リングに上がる。 「マウスピースもはめろよ」 言われてしぶしぶ装着した。 向かい合った貫一さんはヘッドギアも着けている。 本当にスパーリングする気なのだろうか。 彼がグン、と踏み込んできた。 突き出されたボディブローを肘でブロックし、バックステップする。 貫一さん……。 にじり寄ってくるその目は、本気だ。 本気で打ち合う気なんだ。 だけど彼は、俺の顔は狙ってこない。 ボディにだけパンチを打ってくる。 それを俺はフットワークでかわす。
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