俺の光

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その後も、貫一さんはひたすらパンチを打ってきたが、全てボディ狙いだったので簡単にかわせた。 避けるだけで一向に攻撃してこない俺にしびれを切らしたのだろう。貫一さんがマウスピースを外して怒鳴ってきた。 「智典! 本気でやれ! ちゃんとパンチ出せよ!」 俺もマウスピースを外して答える。 「嫌です。俺はあなたを殴れません。それに貫一さんだって俺の顔は打ってこないじゃないですか。本当はスパーリングなんてする気ないんでしょう? ……俺に怒ってるからこんなことするんでしょう?」 「ちがう。これはスパーリングだ。何度も言わせるな、さっさとパンチを打て!」 「……貫一さん、ごめんなさい。俺、あなたの言うこと聞かなくて……あなたは俺を心配してくれたのに。……俺、もう逃げません。だから、殴りたいならいくらでも殴ってください」 「ごちゃごちゃうるさい! いいから早く俺を殴れ!」 「ごめんなさい!」 「殴れ!」 「いやです!」 「俺が好きなら、殴れ!」 「……っ!」 マウスピースをふたたび咥えて、貫一さんが突っ込んできた。
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