俺の光

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俺は避けずに彼の拳を受け止めた。 腹にズシンと重い衝撃が走ったが、腹筋に力を入れれば耐えられるレベルだ。 「っ、貫一さん……」 貫一さんが強烈な目で俺を見上げてくる。 殴れと言っている。 好きなら殴れと。 「く……っ、――」 俺はマウスピースを口に入れると、力いっぱい食いしばって、左腕を振った。 急所は避けて、トン! とボディを打つ。 ナックルに、弾力のある感触が伝わった。 痛い……。 これほど拳が痛かったことはない。 痛くて痛くて、泣きそうになる。 なのに貫一さんはマウスピースをした口でフガフガと「もっとだ!」と訴えてくる。 嫌だ、無理だ、できない! これ以上、絶対に殴れない。 たとえ滅多打ちにされても、みっともなくリングに這わせられても、あなたにだけはやり返せない。 無言で首を振る俺に、貫一さんはまたマウスピースを外して言った。
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