俺の光

39/42
前へ
/267ページ
次へ
「ぼけっとしてないで食べろよ」 ほかほか湯気が上がる皿が目の前に置かれた。 「……いただきます」 熱々の豚もやしを口に入れて、あまりの美味しさに箸が止まらなくなった。 ご飯と味噌汁を温めなおしてきた貫一さんも、俺の向かいに腰を下ろして食事を始める。 「貫一さん、美味しいです」 「そっか」 貫一さんの目が嬉しそうに細められた。 それを見て、俺の箸はますますスピードアップする。 「美味しい、美味しいっ!」 「わかったからそう急いで食べるな。消化に悪いから」 それもそうだとペースを落とし、一口ずつ大事に咀嚼する。 貫一さんの料理は美味しいだけでなく栄養面でも優秀だ。 ちら、と台所の戸棚を見る。 そこには栄養学の本が何冊も並んでいる。 それらは俺がここで夕食を摂るようになってから少しずつ増えていったもので、ページの端には数え切れないくらいの折り目が付いている。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

171人が本棚に入れています
本棚に追加