心のガード

2/7
前へ
/267ページ
次へ
パン! パン! という音がジムの中に反響する。俺が投げたソフトテニスのボールが壁に当たって跳ね返る音だ。 返ってきたボールをキャッチし、またすぐに投げる。その軌道上には、姿見に向かってシャドウをする智典がいる。 智典は俺が投げるボールを避けながら、仮想の柳瀬と戦っている。 すごいスピードだ……。 智典はたった2ヶ月で著しい成長を遂げた。 2ヶ月前、打倒柳瀬と銘打って新しいメニューを組もうとした際、智典がスピードアップを重視したいと言ってきた。 「柳瀬さんのスピードに追いつきます」 無茶な、と思った。 たしかに一番のネックであるスピード差が縮まれば、勝利のパーセンテージは一気に跳ね上がる。 だが柳瀬のスピードは常識外れだ。彼に追いつくなど無理がある。 だけど智典は言った。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

171人が本棚に入れています
本棚に追加