心のガード

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「怒ってるじゃないですか。すみません、機嫌なおしてください」 「だから怒ってないって」 そう言って、ちら、と智典を見上げる。 大丈夫だろうか……。 俺の思考を読んだように、智典が口を開いた。 「大丈夫。俺、決めたんです。もう二度と、あなたに負ける姿なんか見せないって」 「智典……」 「俺は、あなたのチャンピオンだから」 あの日、控え室で俺が言った言葉。 それに引きずられるように、消沈した智典の横顔が思い出される。 アザは消えたけど、心に負った傷はそう簡単に癒えはしない。……俺の手料理くらいじゃ、回復させてあげられない。 恥を忍んで三輪くんから渡してもらった俺の昔の試合映像は、少なからず智典の励ましになったようだが、それだって不安を消すような効果はなかっただろう。 今だって、きっと強がってる。 その強気な発言から、自分を奮い立たせようとする意思が伝わってくる。 ――あなたを、必ず世界に連れて行くから 連れて行く、か。
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