俺の光

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「大丈夫なわけないだろ。お前、3回もダウンしたんだぞ」 「大丈夫ですって。病院の精密検査でも問題ありませんでしたし。貫一さんも付き添ってたから知ってるでしょう?」 「ダメなものはダメだ。最低でも1ヶ月はトレーニング禁止!」 「えー……」 貫一さんは、腫れは引いたがアザだらけの俺の顔を痛ましそうに見て、噛んで含める口調になった。 「あのな、画像診断で目立った損傷がなくても、体はダメージを負ってるんだ。 特に頭のダメージは怖い。脳しんとうを起こした頭の中ってのは、脳が通常時より腫れてる状態なんだ。そこへさらに振動を加えたりしたら重篤なパンチドランカー症状を引き起こすことだってある。……お前、痴呆症になりたいのか?」 「それでも、休んでなんかいられません。早く練習したいんです」 強めに訴えると、貫一さんは眉間にシワを刻んで黙り込んだ。 「貫一さん、お願いです」 「……わかった。それなら2週間後から少しずつ練習を始めよう。それで調子が良くなってきたら、新しいトレーニングメニューを組む。いいな?」 「……はい」 「わかったらさっさと帰れ。大学行く以外はひたすら寝ろ。そうしないとダメージが抜けない」 「わかりました……じゃあ、また」 「ああ……」 ジムを出た瞬間、少しほっとした。 練習はしたいけれど、今はまだ、平気なふりを長く続けられない。
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