再戦

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柳瀬さんとのダイレクトリターンマッチの日程が決まり、予備検診と調印式が終わった。 前日計量も、俺も柳瀬さんもミドルリミットギリギリの数値でパスした。 そして今日、7月23日の後楽園ホールの客席は、立見席までぎっしりと埋まっている。 ざわつく会場に選手入場のアナウンスが響き、俺の入場曲が流れ出した。 熱く力強いリズミカルなドラムスに、ドラマティックにうなるギター。 それを聞いた貫一さんが、バッと俺を振り向いた。目を大きく見開いている。 「お前……」 Survivor(サバイバー)のBurning Heart。 貫一さんの試合動画で流れていた彼の登場曲だ。 曲の年代からして、お父さんが使っていた曲を受け継いだのかもしれない。 それを、俺も受け継ぐ。 微笑みかけると、貫一さんはぐっと口を閉じて、前を向いた。 俺を先導する背中に、心の中で語りかける。 あなたが、俺に炎を点してくれたんだ。 もう一度立ち上がる力を、あなたがくれた。
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