再戦

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そうだ、前回はこれでやられた。 柳瀬さんは後退しつつカウンターを狙っている。 迂闊に飛び込めば、カウンターの餌食になる。 不用意な攻撃はできない。 ……それでも、手を出さなければポイントは奪えない。 落ち着け、冷静に、冷静に。 彼の罠にかからないよう警戒しながら、ジリジリとすり足で迫っていく。 俺が勢い任せに突っ込んでこないのを見て、柳瀬さんは作戦を変更したらしい。左のガードを下げて、フリッカースタイルにスイッチした。 鋭いジャブが下方向から何発も飛んでくる。 パンッ、シュパン、鞭のようにしなる腕が音を奏でる。 重い拳ではないが、硬い。 グローブのクッション性を感じない硬さだ。 彼のスピードが、その拳を硬質な刃に研いでいるのだ。 だが…… ガードを固めて前傾姿勢になり、剃刀のような拳をもろともせず踏み込んだ。
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