再戦

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距離を縮め、手首のスナップを効かせた左ジャブをトリプルで打つ。 柳瀬さんがとっさにアームガードを取った。 ステップやウィービングなどのモーションでは避けきれないと判断したのだろう。 だが俺の力は、彼の想定を超えていたようだ。 俺のパンチを前腕に受けて、彼の動きが止まった。 今だ! ぐっと重心を前へ移動し、爪先から膝、腰、肩、腕、ねじりの中で圧縮した力を右拳に乗せ、 ドンッ! ベルトラインの上に爆発させた。 「柳瀬っ!」 赤コーナーから動揺した叫びが上がった。 顔を歪ませた柳瀬さんに、心の中で語りかける。 成長したでしょう? あなたに負けたあの日から、俺はひたすら自分を磨き続けてきた。 筋力を上げてスピードアップしただけではない。無駄なモーションを削ぎ落とし、効率的に力強いパンチを当てられるよう特訓してきたんだ。 あなたを倒すために。
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