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柳瀬さんのジャブとワンツーを防ぎ、その打ち終わりを狙って、クロス気味に左右のストレートを合わせた。
彼は避けたが、わずかにバランスを崩した。
そこを見逃さない。
ここぞとばかりに手数を出して押していく。
バックステップで距離を取らせないよう、とにかく勢いで押しに押し、再びロープに追い込んだ。
横に逃げる隙など、もう与えない。
スピードパンチの連打を、柳瀬さんのガードに浴びせる。
このまま突き崩す!
柳瀬さんの顔が歪んでいく。
その前腕が赤くなっていく。
このまま防御を続けるのは難しいと判断したのだろう、柳瀬さんはとうとうガードを捨て、攻めに転じた。
俺も打ち負けるつもりはない。
ミドルレンジとショートレンジの中間、クロスレンジで打ち合う。スピードのある互いの拳が閃き、バチバチと炸裂音を生じさせる。雷雨のごとき殴り合いだ。
打ち合いになればパワーに勝る俺が有利だと思っていた。が、それは甘かった。
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