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突き出すナックルに手ごたえがない。
柳瀬さんはうまく俺のパンチの芯をずらしてダメージを軽減させているようだ。
俺ばかりがシャープなパンチで削られていく。
焦りを感じたとき、
ドン!
みぞおちにカウンターを被弾した。
瞬間、呼吸が止まる。
「ぐっ……!」
「智典っ!」
苦しさを何とか堪え、ガードを固めたところでゴングが鳴った。
やはりスピードが同等になっただけでは対等になれないのか……。
……当然か。俺と柳瀬さんとの間には、縮められない経験差がある。
スツールに座って貫一さんのケアを受けながら、じっと考える。
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