再戦

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強者は格下相手でも事前の構えを怠らない。 柳瀬さんも、俺の過去の試合をチェックしているだろう。そこに前回の試合のデータを加えて、今回の俺の動きを予想していたはずだ。 その予想も、俺のレベルアップでだいぶ狂っただろうが、そこは場数を踏んできた柳瀬さんのことだ。培った対応力で、先のラウンド中にデータの修正を行い、俺のパンチを先読みできるようになったのだろう。 次の動作を読まれていては、有利に立つのは難しい。 ……それなら、読みの裏をかけばいい。 彼のデータにない新たな技を使うのだ。 実戦で使ったことのないこの技が、柳瀬さんに通用するかはわからない。 あっさりかわされてしまえば、ボディがガラ空きになる。そこを狙われて返り討ちをくらう可能性は高い。 危険な賭けだ。 だが、リスクを負っても倒しにいく。 3ラウンド開始のゴングが鳴った。 気合を入れ、コーナーを飛び出す。
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