再戦

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え……? 柳瀬さんが消えた。 どこだ? どこに……。 戸惑う俺の前に、レフェリーが立ち塞がった。 「ダウン! 来宮選手、ニュートラルコーナーに下がって!」 目線を下げると、レフェリーの肩越しに、腹ばいになった柳瀬さんが見えた。 会場に豪雨のようなざわめきが広がる。 「ワン! ツー! ……」 柳瀬さんがむくりと上体を起こした。 その鼻から垂れる血が、白い肌を鮮やかに染めている。 彼は目を大きく見開いて、数秒間、座ったまま動きを止めていたが、カウントエイトで立ち上がり、ファイティングポーズを取った。 レフェリーを挟んで柳瀬さんと向かい合った俺は、まだ事態を呑み込めないでいた。 当然倒すつもりでコークスクリューを放ったが、その一発でダウンさせられるとは思っていなかった。
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