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パンチが当たる直前、微妙に頭をずらされた感触があったので、やはりまたパンチの芯を外されてダメージを軽減されたと思った。
さすが柳瀬さんだ、海千山千のこの人を、そう易々と突き崩せるわけがなかったのだと思った。
……俺はどうやら、前回の恐怖と敗北意識から、彼をまるで超人のように思い込んでいたらしい。
彼は人間だ。
叩けば壊れる生身の人間なんだ。
しかもこれまで彼は、そのスピードゆえにほとんどの試合で相手の攻撃を受けてこなかった。
それだけに、やはり打たれ弱いのだろう。
俺の渾身のショットは、パンチの芯を外したとしても、彼にとって十分な威力であったようだ。
ダウン、取った……柳瀬さんから、ダウン……
じわじわと喜びが湧いてくる。
本当は、不安だった。
自信を粉砕された相手に対して、自信を持つのは難しい。
必死に自分を信じようとしては揺らいでいたが、今、ようやく足場が固まった気がする。
グローブの中でぐっと拳を握ったとき、柳瀬さんの異変に気づいた。
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