再戦

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ハァ、ハァ……高山病にかかったように酸素を吸い込みながら青コーナーに戻った俺を、貫一さんは抱きとめるようにスツールに座らせ、打たれた箇所をアイシングしてくれた。 ぼーっとしていると、ふと、冷やされた頬にじんわりした温もりを感じた。貫一さんの手の感触―― 「セコンドアウト!」 励ますような眼差しを受け、立ち上がった。 「ボックス!」 インターバルを挟んでも、柳瀬さんのプレッシャーは収まっていない。どころか強まっている。 向かい合っただけで息が詰まる。 それでも貫一さんに温めてもらった心を奮い立たせて挑む。が、柳瀬さんが発する冷たい空気は、心の温度まで奪っていく。 踏み出す足を一瞬ためらった。そのとき、 ビュウッ! 予備動作がまったくない状態から放たれた鋭いスマッシュに、不意を突かれた。 よけ切れず、耳にくらった。 三半規管がいかれたらしい。視界がぐらっと歪む。平衡感覚を失って体が傾く。 たまらず、柳瀬さんにもたれるようにクリンチした。
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