再戦

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「ブレイク!」 レフェリーに引き剥がされ、距離を取る。 「ボックス!」 めまいで一歩目からぐらついた。 体勢が崩れかけたが何とかこらえて、よたよたとステップを踏む。 そこへ、柳瀬さんのロングフックが襲ってきた。 パァン! ――もう一度、耳を狙い打たれた。 「……!」 意識が飛びそうになったがマウスピースを噛んで繋ぎ止める。だが体を支えきれない。耐えきれず膝を折る寸前、ゴングが鳴った。 よろめきながら青コーナーに戻ると、貫一さんが手早くケアしてくれた。汗でずぶ濡れになった体を拭いて、頭や首に氷嚢を当ててくれる。 おかげで、ぐらつきが収まってきた。 深呼吸して、何度かまばたきをする。 ……よし、大丈夫だ、いける。 「あのな、智典……」 貫一さんが何か言いかけて、口をつぐんだ。 そしてにっこりと笑う。 「勝って、帰ってこい」 マウスピースを差し出す指先が、少し震えていた。 それに気付かないふりをしてマウスピースを咥え、しっかりと頷く。 「ボックス!」
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