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ハッとして柳瀬さんの顔を見ると、白い肌は真っ赤になり、青い瞳も充血している。次々と噴き出す汗が首筋に浮かんだ血管を伝い流れていく。
それは明らかな憔悴だった。
これまで放射されるプレッシャーにばかり気を取られていたが、よく見れば柳瀬さんもかなりのダメージを負っている。
そういえばさっきからあまりステップを踏んでいない。……そうか、俺がダウンを奪ったボディブローのダメージが脚にきているんだ。
脚が鈍くなったからアウトボクシングをやめて、早急に試合を決しようと攻めてきているのかもしれない。
それなら……っ!
伸ばされた右をかいくぐり、彼の圧力を撥ねとばすように、ブンッ! 右のアッパーを打ち上げた。
すんでのところでスウェーされてしまったが、思い切り腕を振れたことで体のこわばりが解けた。
よし、ここから一気に反撃だ!
猛然とラッシュで押していく。
柳瀬さんは一転、守り一辺倒になった。荒く息をしてガードを固め、俺を睨んでいる。俺も負けずに睨み返す。
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