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どんな痛みもリスクも背負い、前進する勇気。
その勇気を、俺は持っている。
俺の後ろには、勇気の源がいる。
あのひとがいる限り、俺は止まらない。
どこまでも突き進む。
動く。
まだ俺の脚は、動く!
覚束ない脚を、意志で突き動かす。
肋骨や背骨が軋むのを無視して前進する。
そこへ、ビュゥン! と電光石火のような拳が飛んできた。
ブロックしたが、拳はやまない。左右から交互に打ち付けられる。
何故いきなりスピードが戻ったのかと驚いたが、柳瀬さんの目を見て、わかった。
彼は、体に残っていた全ての力を絞り出し、勝負をかけてきたのだ。
速い拳だ。速い。
だが、俺はそれをヘッドスリッピングでよけていく。
確かに速いのだが、俺はそのモーションを予見し、対応できる。
何度も彼の試合動画を見て彼の動きを頭に叩き込み、イメージシミュレーションした成果だろうか。それとも何ラウンドか拳を交えたことで読めるようになったのか。
わからないが、自分が常時の感覚でないことだけは確かだ。不思議と現実感が失せている。
そのとき、まぶたがチッと熱くなった。
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