再戦

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貫一さんが弾けるように駆けてきた。 勢いよく俺に抱きついて、 「よくやった! 頑張ったな! がんば……っ…」 そこで言葉を途切れさせ、俺の肩に顔を押し付けた。 肩が湿っていく感触に、ぐっと熱いものが込み上げてくる。 その衝動のまま彼を掻き抱き、マウスピースを吐き捨てて、 「うおぉぉぉーーー!」 雄たけびを上げた。 口の中が切れて溜まっていた血が飛ぶが、かまわず咆哮した。 勝った。 俺は、勝った。 挫折から立ち上がり、高い壁を越えられた。 貫一さんが目指していた場所に、立てた。 やったよ、貫一さん。 俺、やったよ。 ほら、これが、あなたが見たがっていた景色だ。 眩しいね。熱いね。 ねぇ、貫一さん…… 言葉の代わりに、抱擁で、彼に気持ちを伝える。 ごめんも好きもありがとうも、全部ひっくるめて抱きしめた。
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