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「あ、そうなんですか」
ほけっと貫一さんを見上げて、ふと彼の目の下のクマに気づいた。
「……もしかして貫一さん、寝てないんですか?」
「寝たよ」
疲労の色が濃い微笑みを浮かべると、貫一さんは俺の手を離し、立ち上がった。
「それより、起きたんなら早く支度しろ。あと2時間でフライトだぞ」
「はぁ……」
急かされ、ぼんやりしたまま着替えて、タクシーに乗せられた。
だが今回の睡魔はかなり手ごわかった。
飛行機に乗り込んだあともまた爆睡し、福岡空港に到着して起こされたものの、タクシーで貫一さんの家に着くと、また眠ってしまった。
完全に目を覚ましたのは、翌日の正午ごろだった。
俺は、貫一さんの家の居間に敷かれた客用布団に寝かされていた。
枕元には母さんと美咲さんがいた。
二人とも一昨日の試合には来ていなかったが、貫一さんに連絡して試合結果を知ったらしい。泣き腫らした目で、「おめでとう」と言ってくれた。
「ありがとう」と返すと、母さんは俺の頭を撫でて立ち上がった。
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